商売柄たまに聞かれること
喧嘩した事ありますか？
まぁまぁ
一応は男の子ですからね
無い事はないけど
女子供としかしませんよ
鈴蘭には一年戦争というのがある
ちょっと似ているけど、
幼稚園年長の時に色々ありました
当時、コバヤシくんという体の大きな友達がいた
自分の中での最強はコバヤシくん
でも彼は喧嘩とかはせず、
非常に大人びていた
寡黙と言うか、
賢者と言うか
夜になると町へ出て悪者退治をしている事、
その時の相棒は弟であること
天井くらい迄はジャンプ出来るということ
等など、秘密の楽しい話をよくしてくれた
同園の弟君にも
天井までジャンプ出来るの？
と聞くと、
静かに頷いた
当時やっていたアニメ番組
そこには進行役でアニモグラというキャラが出ていた
精巧に作られたぬいぐるみのモグラなんだけど
コバヤシくんはそれを実在するモグラと言っていた
オヌマはアニモグラが大好きだったので嬉しかった
後日、
コバヤシくんはアニモグラを捕まえたと教えてくれた
さすが！
と思いながら、どこに居たのか聞いた
関東地方まで行って捕まえた
幼稚園児のオヌマにとって「関東地方」はガンダーラ並みに未知だったけど、
アニモグラは必ず捕まえたい
家に帰り母親に
「アニモグラを捕まえたいから関東地方に連れて行って」
と言うも、
「ここも関東地方だよ」
と言われ、
お母さんは関東地方を知らないっぽい
と、関東地方行きを諦めた
そんな園生活の中でもトラブルは結構あった
いわゆるファイト
オヌマはアグレッシブにこなし、
寿司屋の息子
電気屋の息子
中華屋の息子等を撃破
我が家には父の手製のサンドバッグがあり、
園児でありながらパンチを主体にファイトをしていた
ある日「じゅん」という挑戦者が現れた
威勢の割りに弱い奴で、
あっさりと軍門に下った
他にも精力的にファイトをこなしている奴がいた
イイダだ
イイダはズゴック体形で運動神経が良かった
そして同じくパンチを主体に戦っていた
ある日、イイダと話をしていた時
「俺が一番でお前が二番だな」
と言われた
いや、一番はコバヤシくんだ
だから二番が俺でイイダは三番だ
と返した
それに納得がいかなかったイイダは、
コバヤシとケンカして来ると言い出て行った
勝てる訳がない
普段は賢者なコバヤシくんだが町の平和を守っている強者
はっきり言ってレベルが違う
しばらくするとイイダはコバヤシくんを連れて教室に戻って来た
イイダに連れられて入って来たコバヤシくんは
鼻血を出しながら泣いていた
その姿はおっきめの園児でしかなく
いままで騙されていた事を知った瞬間だった
なっ！
とイイダは誇らしげに言った
イイダに堪忍袋の緒が切れた男(園児)が立ち上がった
舎弟のじゅん
お前じゃ勝てないからやめとけと言ったけど、じゅんの決意は固かった
イイダが強いとは思っていたけど、
じゅんは弱いと思っていた
その日の内に隣の教室で騒ぎがあり、
行くと床に転がったじゅんが鼻血を出しながら泣いていた
イイダはピョンピョン跳ねながら勝利を喜んでいた
子分がやられて黙ってはいられない
お前泣かしてやる！！
イイダに向かって行った
満面の笑顔で迎撃態勢に入ったイイダ
そこで先生が止めに入った
互いに羽交い絞めされ
「お前泣かしてやるからな」
と言ってやると
「お前が勝てる訳ないだろ！！」
と、静止を振りほどこうと前進してくるイイダは超笑顔
待ちに待った瞬間だったのかもしれない
とは言え園児
普段は一緒に砂場で遊んだり、
廊下でかけっこ対決をしたり
お遊戯も同じチームだったり
結局ケンカはせず
卒園後は会う事もない
当時自分を「俺」と言っていたかは定かではないけど、
それ以外は実名事実のお話
