Y太朗が念願の初勝利を挙げました。小学校1年(多分)から格闘技を始め、今年の4月から中学生になるのですが、過去、幾度と試合に参戦するも勝てず、参戦頻度は減って来ていました。試合は出ないより出た方が心技ともに成長は見込めますが、強制はしていません。
車の運転免許試験で有れば、90点を取れば合格です。団体競技での敗戦は、それなりに出来が良ければ「自分のせいで負けたのではない」と、思えます。格闘技の試合は100点の出来で有っても、相手が強ければ負けてしまいます。全力で立ち向かっても、全然力を出し切っていない選手にあっさり負ける事もあります。1対1の戦いですから、勝率は50%は有る筈なのですが、勝てる日が来ると思えない、先の見えないトンネルに入っている選手も多くいます。
練習参加率は一番で、真面目に練習するY太朗ですが、試合では勝てず、後輩が勝利を挙げている姿を見て、試合に出たくない気持ちが出ているんだろうとは思っていました。負けた時も、陽気に振舞うというよりは、恥ずかしさを誤魔化している様な振る舞いに見えていて、少なからず懸念を抱いていました。今回の大会に申し込んだと聞いた時は、正直驚きました。
技術は有るけど勝てない選手はいます。普段は「負けている時点で技術は無い。どんなに不格好でも勝った奴がテクニシャンなんだ」と、言っているのですが、実際、良い動きをするのに勝ちを拾えない選手は多くいます。それは運では無く、気持ちの面が多くをを占めています。
今回のY太郎の試合は凄まじかったです。Y太朗のそれまでの背景を知らない大人の選手が「めちゃくちゃ熱い試合をしますね」と、見ていた人を興奮させる試合でした。いつ試合が終わってしまってもおかしくない状態に陥りながらも逃れ、向かって行く、を繰り返し、唇に血を滲ませ、鬼の形相で向かって行き、相手が掴みかけていた勝利を分捕って来ました。念願の初勝利。
こんなにも人は変わるのだろうかと驚きました。勝利の味を知った事で勇敢になる選手は多く見て来ましたが、負け続けた選手があそこまで一心に勝利へ向かう姿を見たの初めてでした。端から端くらいの両極端な変化です。「Y太朗くらい練習していると、ああいう気持ちも育って行くんですね」と、見ていた大人の選手が言いましたが、本人の中では何年も抱えていた、想いが有ったのかも知れません。多感で大人が考えている以上に真剣に悩み、考えている子供は、大人よりはどんどん成長するんだろうなと、勝手に解釈しています。
以前、群馬の大会に参戦した際、初めての試合を控える子が試合直前に「勝たないとなぁ。ここまで来て負けたら何の意味も無いもんなぁ」と、ぼそっと言い、周りに居た大人が「はっ」とした事が有りました。子供は常に大人よりも核心に近い所で物事を考えている。という事なのでしょうか。
決勝は敗れましたが、悔し泣きも成長のしるしです。